2013年1月21日月曜日

『中国人がタブーにする中国経済の真実』:ネットによる革命の可能性




●『中国人がタブーにする中国経済の真実』



石]: 
 これからの中国でははたして民主化が可能なのか、もし民主化が達成できるとしたら、どんな形の民主化になるのか。
 その可能性を語るとき、最も浮上してくるのはネットの可能性でしょう。
 専制政治で埋め尽くされた中国の歴史の中で、直面したはじめての新しい事態が、ネットの存在です。
 毛沢東の時代には、中国には基本的に世論というものが存在しませんでした。
 メデイアそのものが体制の代弁者になっていました。
 そこに、ネットが生まれました。
 ネットは誰かの許可がなくとも、自分の意見を載せることができます。
 そうなると徐々にではありますが、ネットという空間で世論のようなものが醸成されてくるのではないかと思う。
 ネットの登場こそ、中国の将来を考える上で重要な出来事になるのではないか。
福島]:
 「ネット空間内での世論」=「中国の世論」とは、言えないでしょう。
 しかし、ネット世論は確かに、世論の一部にはなっています。
 いままで何も言えなかったのが、見える形で庶民の個別の意見が示されています。
 中国の市民の言いたいことが、ネット上ですくいあげられています。
 ネットの登場は印刷術の登場に匹敵するものでしょう。
 世界の文明社会に大きなインパクトをもたらした、と言ってもよく、中国といえども、その影響を免れるものではありません。
石]: 
 いま中国では基本的にネットに書き込まれる情報は管理され、アメリカ発のツイッターはアクセスが禁じられています。
 政権としてはネットを統制下に置こうとしますが、これは可能でしょうか。
 政権が既存のメデイアを統制していきたと同じように、ネットも統制できるのか。
福島]:
 5億人といわれる中国国内のネットユーザーのうち、民主化を進めようと考えている人たちがそれほど多くはないのは間違いないでしょう。
 一方、多くはないが民主化に向けて意見を表明していくことで、影響を拡大できるのもネットのなせるワザです。
 政権のネット統制の仕方は、年々洗練されてきています。
 つまり、ネットの住民は「当局に統制されているとは気がつかない」くらいに、当局はうまくコントロールしてきています。
 「統制されている」と思えばこそ、政権に反抗したくなるのですが、統制されているとおもわなければ、反抗という発想もありません。
 ネット統制がたくみに進むと、ネットで与えられる情報がすべて真実であると、皆が信用しはじめます。
 結果として、ネット統制がうまくいくことになる。
 おおむね、中国当局のネットコントロールは成功しています。
 ネットユーザーが自由を求めたとき、民主化とは違う方向で自由を与え、ガス抜きしてしまうことは可能です。
 たとえば、違法ダウンロードで外国の映画やアニメ、音楽で充分満足してしまい、言論の自由など関心がないネットユーザーのほうが多いです。
 基本的にコントロールされながらも、ときおりコントロールを外れてネットが盛り上がる背景には、仕掛ける人たちがいるからです。
 彼らは頭がよく、意識の高い人で、彼らが国内にいるのか、はたまた国外で活動しているのか不明で、彼らがネットに仕掛けることでネット世論が立ち上がり、盛り上がっていきます。
 中国でネットから革命がはじまるかというと、体制変革を起こそうと思っているネットユーザーもいることは確かですが、ほんの少数です。
石]:  
 肝心なのは、ネットがどんなに発達しようと、ネットはあくまで手段にすぎない。
 ネットを使おうがつかうまいが、まず
 中国人には民主革命をやる気があるかどうか
です。
 もちろん、いまだ民主革命の盛り上がる時ではありません。
 近い将来、中国国内の社会的状況、経済的状況が変わることで、危機感をもつ人が出てきます。
 そこではじめてネットの可能性が出てきます。
 とくにネットの場合、時間をかけて組織づくりする必要がない。
 ネットなら、あっという間に革命のためのネットワークが形成される。
 天安門事件以来、中国共産党は国内での組織的な動きを早い段階に潰してきた。
 共産党は組織的動きを最も危険視しており、未然にその危険の芽を摘み取っている。
 大きな組織が生まれない限り共産党支配を覆すような革命は生まれない
と考えている。
 この手法は有効に機能しているが、ネットが発達してくるとわかりません。
 瞬間的にネットワークが形成され、大きな組織が作られることもありえます。
福島]:
 中国共産党が最も気をつけてきたのが、ネットワークの形成です。
 彼らはネットワークを作らせまいと躍起になっています。
 そのため、リーダーになりそうな人物を早めに潰してきました。
 とくに狙われるのは弁護士と作家で、ある弁護士が目立ち始めると、当局はすぐに捕まえます。
 作家などは有名になると当局が圧力をかけます。
 捕まりたくなければ、海外に出ていくしかありません。
 共産党は捕まえるか、海外に追い出すかして危険の芽を潰してきました。
 ただ、ネットは匿名の世界です。 
 リーダーが自分の所在地を明らかにしなくくともいいし、仮面をかぶっていても大丈夫です。
 ハンドルネーム一つあればよく、そのハンドルネームも一人である必要はなく、同じ志を持つ何人かで仮想の人物をつくり、その仮想人物にハンドルネームをもたせてもいい。
 その意味で、恒常的なネットワークは必要ない。
 リーダーすらもいりません。
 実際、中東革命(ジャスミン革命)でも、恒常的なネットワークも決まったリーダーもないところで、
 突然ネットからの革命が起きています。
福島]:
 ネットからの革命では思想さえいらない。
 「とにかく暴れてみよう」
とネットで叫ぶことで、そこから社会が一気に変わってしまうこともあります。
 これを「革命」という言葉で表現するかどうかは問題ですが、思想がなくとも何か叫べば暴動を引き起こし、政府の転覆さえ起こせるのです。
 愉快犯もような人物が、先頭を切ってもいい。
 内部告発を得意とするウイキリークスのアサンジのような、まったく組織に属さない、ある種の愉快犯的な人物は、世界中に存在します。
 ネット技術の天才や、情報操作における天才のような人物でもいい。
 ある種の天才的人物が、
 「中国国内で騒動を起こしたら面白い」
と思えば、彼が国外にいようとかまいません。
 彼らが政府を攻撃するプランを練ってネットで実行すれば、いっきに
 蜂起のネットワーク
が生まれるかもしれません。
石]: 
 中国で再び革命劇が起きるとき、天安門事件のような学生・労働者の民主化運動があるかといえば、そうはならないでしょう。
 天安門事件型の革命では「民主化」という共通した一つの理念のもとの、組織が一元化、民主化を目指しました。
 しかし、次の革命はそうはならないでしょう。
 いろいろな人たちがいろいろな不満を持ち、これにもう我慢ができなくなったとき、些細な事件をきっかけに、いっきに不満を爆発させるのです。
 その不満をネットが集約し、いきなりどこかで突然に大騒動が起き、政権が押しつぶされていくことになるでしょう。
 立ち退きにあった人も、軍人も、リストラされた人も、陳情にいった人も、親の七光りをかさにきるような息子たちが嫌いな人も、温家宝が嫌いな人も、法輪功をたしなむ人も、共産党員も、民主派の人も、誰でも集会に加わろう、といった具合です。
 このような呼びかけは既に2011年に行われましたが、この時は当局の徹底的な「消化」作業によって実を結ぶことなく、集会も開かれずに終わってしまいました。
 しかし、このような動きは、今後とも起ってくると思います。
福島]:
 おそらく中国共産党も、それを恐れていると思います。
 民主化、自由といった理念の盛り上がりはには対処できたとしても、
 「子供が交通事故にあって見捨てられ、死んだ」
 「すごい汚職が見つかった」
というような事件からの盛り上がりには、共産党も対処しにくいです。
 何かのきっかけで、皆が一斉に個々の不満をぶちまけると、その先どうなっていくのかわかりません。
 それこそがいま、中国共産党が漠然と持っている恐怖だと思うのです。
 共産党としては、
 できるならネットユーザーの不満を日本やチベットなどの外部に向けたい
でしょう。
 あるいは、民族団結の方向に向ける選択もあります。
 ネットユーザーのもっている社会的生活的なさまざまな不満とエネルギーを、共産党以外に向けることは可能であり、そのために彼らは五毛党を仕立てているのです。

(注).「五毛党」とは当局よりの意見を書き込んだり、当局を擁護するレスポンスを書いたりする人たちで、一回のコメントにつき「五毛=0.5元」の手当が当局から支給される。





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