2013年2月2日土曜日

中国から多国籍企業が脱出:資本は常にハイリターンの土地へ流れる



●フォックスコンの工場内



International Business Times 2013年1月28日 09時37分 更新
http://jp.ibtimes.com/articles/39977/20130128/349632.htm
記者:MORAN ZHANG、翻訳者:臼村さおり |

中国から多国籍企業が脱出、インドやASEAN諸国への工場移転を模索中

 「もし、他のアジア諸国でもインフラやサプライチェーンネットワークが整ってくれば、中国にある労働集約型の製造業は、それらの国々に流れていくはずだ」
とキャピタル・エコノミクス(Capital Economics)のガース・レザー(Gareth Leather)氏は言う。

 一方、北京は、外国資本に工場を中国内陸部へ移転することを奨励している。
 内陸部ではスキルの低い人材でも対応が可能な工場を展開し、より高度で付加価値のある製品を海岸部で製造する流れにしようと考えているのだ。
 サムスン電子(Samsung Electronics Co. Ltd)とデル(Dell Inc.)は、製造工場と研究センターを内陸部へ移転した。

 「製造業においては、中国だけが海外直接投資の対象となる時代は終わった。
 中国は依然として有力な候補地ではあるが、今後は分散投資を検討する流れになるだろう」
と情報技術イノベーション財団(the Information Technology and Innovation Foundation)のロバート・アトキンソン(Robert Atkinson)会長は指摘する。

 1月15日に中国商務省が公開した統計によると、2012年の対中国直接投資額は前年比3.7%減の1,117億米ドルとなり、2009年の世界金融危機以来、初めて減少した。

 昨年は、マクロ経済情勢により、海外直接投資が低調に推移した年だった。
 「国際連合貿易開発会議(UNCTAD)」の報告によると、全世界における海外直接投資は前年比18%減。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国への海外直接投資は前年比7%減となった。
 ただ、いくつかのASEAN諸国には明るい兆しがあった。
 カンボジア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナムへの海外直接投資は増えていたのだ。

 それでも、中国は、米国に次いで世界第2位の、海外からの直接投資対象国だ
 とはいえ、資本は常にハイリターンの土地を探している。
 インドや東南アジア諸国など、中国の近隣諸国の方が低賃金労働力が豊富であり、さらには国内市場も期待できる状態なのだ。

 以下、中国以外のアジア諸国への直接投資の可能性を記載する。

■<インド>

 インドには、強い人口統計、大規模な国内市場など、繁栄するための材料がある。
 しかし、面倒なビジネス環境、外国直接投資への制限政策、貧弱なインフラなど、多くの障害も残っている。 
 実際、停電も珍しくない。

 インドのマンモハン・シン首相は2012年6月、今後5年間で1兆米ドルを投資するという大規模なインフラ整備計画を打ち出した。
 しかし、人材の不足が懸念されている。
 インドの高等教育機関は超エリートのためのもの。
 トップクラスの大学を卒業した少数の超エリートはいるが、一般的な高学歴労働力が不足しているのだ。

□.インド政府は、外国直接投資への規制も緩め始めた。

 単一ブランドを扱う小売店への外資小売業の出資比率は51%までだったが、現在は100%の外国資本の出資を認めている。
 インド財務省の外国投資促進委員会は1月23日、スウェーデンの家具小売大手イケア(IKEA)がインド市場に参入することを許可した。
 イケアは25店舗出店し、20億米ドルを15~20年かけて投資する。
 また複数ブランドの小売業でも、最大49%までの外国資本の出資率を守れば、インドで店を開くことができる。

 昨年9月には、外国の航空会社がインドの航空会社に49%まで出資することを許可した。
 債務に苦しむ国内航空会社を救うための措置である。

 保険・年金部門でも、外国資本の出資を従来の最大26%から49%までに拡大した。

 「販売する製品を持っているどんな企業にとっても、インドは進出したい市場だ。
 しかし、投資したらすぐにリターンがある国だとインドを考えているなら、それは完全に間違っている」
とヴェレリー・ドゥモン(Valerie Demont)のペッパー・ハミルトン(Pepper Hamilton)弁護士は言う。

■<インドネシア>

 インドネシア経済は前途有望だ。
 現在でも世界第16位の経済大国であるインドネシアは、マッキンゼー(McKinsey)の分析では、 2030年までには世界第7位になる可能性がある。
 比較的安価な労働力と都市型の中産階級層という消費マーケットは、多国籍企業にとって魅力的な場所だ。

 また、インドネシアは、世界最年少の人口動態統計を維持している国のひとつだ。
 人口の60%が30歳以下であり、人口は年250万人ずつ増加している。
 国連人口部(The United Nations Population Division)によると、インドネシアの人口は、約2億4,000万人(2011年現在)から、2030年まで2億8,000万人に達する可能性があると推定している。

 サービス業への直接投資に加えて、製造業への直接投資が増えている。
 過去5年間の対インドネシア外国資本投資は、サービス業55%、製造業33.3%、第一次産業11.2%であった。

 しかし、国に蔓延する汚職が大きな問題だ。
 トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)によると、インドネシアは、クリーンなビジネス環境の国としては182か国中第100位となっている。

■<フィリピン>

 フィリピンとベトナムには、豊富な労働力と国内市場がある。
 国連の予測によると、フィリピンでは、今後7年間で人口が9,600万人(2012年)から1億1,000万人に上昇する。

 しかし、外国資本投資は漸増しているものの、ほとんどの産業では外国資本の出資比率が最大40%までと制限されているため、投資家にとってはあまり魅力的な土地ではない。

■<ベトナム>

 ベトナムは中国同様、輸出志向型成長モデルであり、フィリピンよりもはるかに積極的に外国資本投資を受け入れている。
 低賃金と政治的安定という長所もある。
 さらに、中国と距離が近いので、中国へ商品を供給しやすいという意味でも有利だ。

 対GDP比でいえば、ASEAN諸国の中ではシンガポールの次に外国資本投資を受け入れている。
 ビジネス環境の面でも、タイやマレーシアには劣るものの、インド、フィリピン、インドネシアよりも競争力がある。

■<タイ>

 ビジネス環境としては、ASEAN諸国の中でマレーシアの次に競争力がある。
 インフラも整備されているので、地方市場への連結もスムーズだ。
 すでに日本企業の製造業のハブ的存在となっていて、他のASEAN諸国と比べると、人件費は高いが、スキルも高い。

 しかし、向こう10年でタイの労働人口は減少し始めるので、賃金の上昇が懸念される。
 ハイエンド製造業へと移行し、ローエンド製造業はベトナムやインドネシアなどの国へと移る可能性がある。

■<マレーシア>

 マレーシアは人口が2,900万人程度と少ない。
 人口は増加するものの、国連の予測では2020年で3,200万人。
 つまり労働集約型の製造業には向かない。
 経済成長率からいえば、比較的裕福な国である。



レコードチャイナ 配信日時:2013年3月6日 17時24分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=70053&type=0

韓国メーカーも“中国離れ”=賃金が割高、移転先は東南アジア―韓国紙

 2013年3月5日、韓国の朝鮮日報によれば、中国における2012年の販売高が2兆ウォン(約1712億円)を超えた韓国のファッションブランド・E-LANDが今後はOEM以外の工場建設を行わない方針を固めた。
 韓国のメーカーが次々に中国から撤退しようとしている。

 韓国輸出入銀行が3日に発表したところによれば、2012年1~9月期、韓国メーカーの中国における投資額は13億9000万ドルだったが、ベトナムやインドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンの東南アジア5カ国における投資額は16億6300万ドルにのぼった。
 1992年の中韓国交正常化以来、中国と東南アジアが初の逆転を見せ、
 韓国の製造業が東南アジア志向を強めていることが数字からも明らかとなった。

 韓国メーカーの中国進出は2004~2007年がピーク。
 2004年、中国国内で新たに製造拠点を設けた企業は1673社にのぼったが、その後は徐々に減少し、2012年1~9月期には273社にまで減少している。
 かつて、多くのメーカーが製造コストの安さを魅力として中国に進出したが、
 米国や日本と同様に韓国も“中国離れ”が加速していることが明確となった。

 中国における給与水準は2005年以降2ケタ成長が続いており、各国メーカーの中国離れの背景には人件費の高騰があると見られる。
 ジェトロによる2012年10月の統計では、
 中国製造業界の工員の1人当たり平均月給は328ドル。
 フィリピン(253ドル)、
 ベトナム(145ドル)、
 ミャンマー(53ドル)
を大きく上回っている。
 日本の例で言うと、こうした背景に加えて、
 昨秋の尖閣問題によって政治・外交問題に翻弄されるリスクを痛感したことが中国回避に拍車をかけている。

 ただし、韓国・ソウルの成均館大学校経営専門大学院は
 「中国離れを起こしているのはほとんどが、低賃金をよりどころとしている企業。
 世界最大の消費市場である中国に生産拠点を持つことは、依然として大きな意義があるはずだ」
としている。







中国戦闘機、スタンバイへ


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